声を失おうとも言葉を失おうとも、人は生きる。そもそも生物は言葉は持たずとも生きてきたし、発する言葉がなくとも人は考えることはできる。ただ、言葉がないとそれを傍らの人に伝えることができない。思いを綴り伝えることで生きてきた人は、その術を失いつつある時に何を思うか。ペンを握る手を支えても文字は書かれない。あわてて文字盤を作ってもそれを指せず、うまくいかない"こっくりさん"状態になる。それでも諦めず何か伝えようとしている。目が訴える。伝えることで生きてきた人の、生への執念か。